「復刻」と「再建」と「宣言」——この3つのキーワードが、2026年3月第4週の革業界を彩りました。国内では革靴の老舗ブランドが伝説のモデルを復刻し、一方でバイオ繊維スタートアップが大きな転換点を迎えました。そして世界では、革産業がひとつの声で「革を選ぼう」と呼びかけるキャンペーンが本格始動しています。今週もleather-note.com編集部が、皆様に届けたい革業界のニュースをお届けします。
目次
- ①リーガル ブーツマーク、”コブラヴァンプ”「2167 BM」復刻発売
- ②スパイバーが私的整理——バイオ繊維の夢はどこへ向かうのか
- ③2026-27秋冬パリコレに見る「愛着」のトレンドと革素材
- ④APLF 2026香港大会が閉幕——世界の革が集った3日間の記録
- ⑤Leather Naturally「Make It Leather」キャンペーン始動
- ⑥UNIC会長「カーボンニュートラル革は実現可能」——APLFでの発言が示す未来
- ⑦革業界を揺るがす中東情勢——Leatherbizが警告するリスク
- 今週の総括・展望
- レザー・皮革業界関係者の皆様へ
- よくある質問(FAQ)
- 参考記事リンク

①リーガル ブーツマーク、”コブラヴァンプ”「2167 BM」復刻発売
日本の老舗革靴ブランド「リーガル(REGAL)」が手がけるリブランディングプロジェクト「リーガル ブーツマーク(REGAL Boots Mark)」が、3月20日より先行発売、3月27日から一般発売を開始しました。今回復刻されたのは、1972年に誕生し「コブラヴァンプ」の愛称で長年親しまれてきた名作「2167」です。つま先(ヴァンプ)の形状がコブラの頭部に見えることからこの呼び名がつき、リーガルが日本市場に上陸して最初に生産したモデルとして知られています。
復刻モデル「2167 BM」は、しなやかでハリと光沢感のある牛革を使用し、グッドイヤーウエルト製法で仕上げられています。カラーはブラックとダークブラウンの2色展開で、価格は税込3万1,900円。「ファセッタズム(FACETASM)」デザイナーの落合宏理氏を筆頭とするクリエイティブチームが、クラシックと革新の融合を体現しています。
📝 編集部コメント
「コブラヴァンプ」の復刻は、単なる懐古主義ではありません。落合宏理氏というコンテンポラリーなデザイナーを起用しつつ、グッドイヤーウエルトという堅牢な製法を貫いた点が注目です。リーガルは昨年、希望退職募集と製造子会社清算という厳しい構造改革を断行しました。そのなかでも「クラフツマンシップ」を核に据えた新ライン展開は、革靴ブランドが生き残るための一つの答えを示していると言えます。革好きにとってはグッドイヤーウエルトの国産革靴がこの価格帯で入手できることは朗報であり、事業者にとっては「ブランドの原点×現代のクリエイティブ」という組み合わせが市場に刺さるかを注目したい事例です。
②スパイバーが私的整理——バイオ繊維の夢はどこへ向かうのか
2026年3月25日、山形県鶴岡市に本社を置くバイオベンチャー「スパイバー」が私的整理に入ることが明らかになりました。株主総会で私的整理および事業譲渡に関する議案が全て可決され、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長の長女・川名麻耶氏が代表を務める新会社「CRANE(クレーン)」に設備・知的財産・人員が引き継がれます。
スパイバーは、クモの糸の人工合成研究を起点に2007年に創業した慶應義塾大学発のスタートアップです。独自開発した構造タンパク質繊維「ブリュード・プロテイン(Brewed Protein)」は、ゴールドウインのTHE NORTH FACEやバーバリーの製品にも採用されるなど、次世代サステナブル素材として大きな注目を集めてきました。しかし2024年12月期の決算では、営業収益4億1,400万円に対して純損失295億円を計上。約360億円の金融負債の返済期限が迫るなかで、自力再建の道は断たれました。
📝 編集部コメント
スパイバーの事例は、革業界にとっても対岸の火事ではありません。「代替素材の台頭」に脅威を感じてきた皮革産業ですが、その代替素材のスタートアップがこれほどの苦境に立たされているという現実は示唆深いです。技術の先進性だけでは市場は成立しない——大量生産・コスト競争力・継続的な資金調達が揃わなければ「夢の素材」は商品になりません。一方で、技術と知財は新会社に引き継がれます。川名氏の経営手腕のもとで「ブリュード・プロテイン」が市場で復活する可能性も残っています。天然皮革業界はこの動向を冷静に観察し続けることが大切です。
③2026-27秋冬パリコレに見る「愛着」のトレンドと革素材
3月23日発売のWWDJAPAN(2026年3月23日号)は、2026-27年秋冬パリ・ファッション・ウイークの特集を掲載しました。今シーズンのキーワードは「愛着」。メンズコレクション、ミラノに続き、パリのウィメンズブランドもこのムードを花開かせました。「代々にわたる継承」「制服のように毎日着込むことで生まれる愛着」「伝統を守るための革新で新たな魅力を備えたスタイル」など、古き良きものを現代に蘇らせる表現が多数見られました。
このトレンドは革製品・革素材にとっても追い風と言えます。エイジングによる経年変化を楽しめる本革の特性は、「愛着」「継承」「使い込むほど育つもの」という今シーズンの価値観と直結しています。
📝 編集部コメント
「愛着」というトレンドキーワードは、革製品ユーザーにとって非常に身近な感覚です。使い込んで自分だけの色艶が出てくる本革のバッグや財布は、まさにこのトレンドの体現者。ファッション業界の大きな流れが、革を選ぶことの正当性を後押ししているとも読み取れます。ブランド担当者にとっては、「長く使えるもの・育てるもの」というストーリーを商品コミュニケーションに積極的に取り入れる絶好のタイミングです。
④APLF 2026香港大会が閉幕——世界の革が集った3日間の記録
世界最大級の革・素材トレードフェア「APLF 2026」が、3月12日〜14日の3日間にわたり香港コンベンション&エキシビションセンターで開催され、3月26日に総括レポートが公開されました。65カ国以上から90名超のバイヤーが参加し、約1,000件のビジネスマッチングセッションが実施されました。セッション参加率は100%を達成したと主催者は発表しています。
一方で、一部のインド人出展者からは「中東情勢による物流への影響」への懸念も聞かれました。また、Leatherbizの市場インテリジェンスレポートでは、中東での新たな紛争が、エネルギーコスト上昇・物流の複雑化・革製高級品需要の落ち込みという3つのリスクをもたらす可能性があると指摘しています。
📝 編集部コメント
APLFは世界の革業界が一堂に会する「業界の体温計」とも言える場です。ビジネスマッチング100%参加率という数字は業界の活力を示していますが、中東情勢のリスクは軽視できません。ホルムズ海峡周辺の不安定化は、原皮の輸送コストや加工コストに直接影響します。日本の革事業者にとっても、仕入れコストや価格設定の見直しが必要になる局面が来るかもしれません。情勢の変化を注視していく必要があります。
⑤Leather Naturally「Make It Leather」キャンペーン始動
革産業の国際的な普及啓発組織「Leather Naturally」が、2026年のワールドレザーデー(4月29日)に向けて「Make It Leather(革を選ぼう)」をテーマとした大規模キャンペーンを3月20日に始動しました。キャンペーンのコアメッセージは「量から価値へ、使い捨てから耐久性へ、トレンド消費からクラフツマンシップへ」というシフトです。
Leather Naturallyは早期3月にワールドレザーデー専用のデジタルハブを新たに立ち上げ、事実確認・ミスバスティング・インスピレーション資料を一元公開しました。また年間を通じて「Make It Leather」メッセージを維持する「オールウェイズオン」戦略を掲げ、SNS・PR・グローバルインフルエンサーを通じた展開も予定しています。毎年2億7,000万枚以上の原皮が革に加工されており、食肉産業の副産物を有効活用するという環境的価値もデータとともに発信する計画です。
📝 編集部コメント
「Make It Leather」は、世界の革産業が一致団結して消費者に語りかけるキャンペーンです。「ヴィーガンレザー」「代替素材」という言葉が溢れる昨今、天然革の価値を正しく・力強く伝えることの重要性はかつてないほど高まっています。日本の革事業者・ブランドの皆様にもこのキャンペーンの趣旨を参考にしていただき、自社のSNS発信やストーリーテリングに「革を選ぶ理由」を積極的に取り入れていただければと思います。4月29日のワールドレザーデーは、業界全体で革の魅力を発信する絶好の機会です。
⑥UNIC会長「カーボンニュートラル革は実現可能」——APLFでの発言が示す未来
イタリアの皮革製造業団体「UNIC(ユニク)」会長のファブリツィオ・ヌーティ氏が、APLF香港の会期中(3月13日)、「Leather Leaders」という新しいサプライチェーン協働プログラムのプレゼンテーションにおいて、「カーボンニュートラルな革を生産している事例がすでにある」と発言し、さらに「カーボンポジティブ(環境に対してプラスの効果をもたらす)な革の実現も十分に可能だ」と強調しました。
ヌーティ氏は、新たな生物起源炭素(biogenic carbon)に関する科学的知見や、合成素材の環境負荷を正確に評価するライフサイクルアセスメント(LCA)データの進展が、革のサステナビリティを証明する力になると述べました。「合成素材ではそのポテンシャルはない」という言葉は、天然皮革の持つ環境的優位性を改めて示すものとして注目されています。
📝 編集部コメント
「革はエコではない」という誤解はまだ根強く残っています。しかし、科学的なLCAデータが整備されるにつれ、天然革が実は持続可能な素材であるという事実が徐々に広まりつつあります。タンニン鞣しの革であれば、その生物分解性や副産物活用の観点からも環境への貢献は明らかです。日本のタンナーや革製品ブランドにとっても、「カーボンニュートラル革」という言葉を武器に環境訴求を強化できる時代が近づいていると感じます。
⑦革業界を揺るがす中東情勢——Leatherbizが警告するリスク
業界専門メディア「Leatherbiz」は3月26日付のマーケットインテリジェンスレポートにおいて、中東情勢の悪化が革産業に及ぼすリスクについて警告を発しました。具体的には、①エネルギーコストの上昇、②ホルムズ海峡周辺の輸送ルート不安定化に伴うグローバル物流の複雑化、③中東市場における高級革製品(高級車内装・家具・バッグ・靴)の需要減退——という3つのリスクが指摘されています。
APLF2026に参加したインド人出展者の中にも、地政学的緊張とホルムズ海峡周辺の輸送混乱への懸念を示す声があったと報告されています。
📝 編集部コメント
日本の革業界は原皮の多くを海外からの輸入に依存しており、国際的な物流コストの変動は直接的な影響を受けます。中東市場は高級革製品の重要な需要源でもあり、需要の落ち込みはグローバルサプライチェーン全体に波及します。情勢を注意深く見守りつつ、仕入れや価格設定の柔軟な対応を準備しておくことが事業者にとって重要な時期です。
今週の総括・展望
2026年3月第4週の革業界は、「復刻・再建・宣言」という3つの軸で動きました。
国内では、リーガルによる「コブラヴァンプ」の復刻が象徴するように、職人の手仕事と本革の価値を現代に再解釈する動きが力強く続いています。一方でスパイバーの私的整理は、いかに革新的な素材技術でも「事業としての持続性」がなければ市場には届かないことを改めて示しました。代替素材の台頭という脅威論に揺れることなく、天然皮革が持つ本質的価値——経年変化・耐久性・サステナビリティ——を磨き上げることこそが、今後の生き残り戦略の中心に来るべきです。
海外では、APLF 2026の閉幕とLeather Naturallyの「Make It Leather」キャンペーンが示すように、グローバルな革産業は「量より価値」「使い捨てより耐久性」というメッセージで消費者に働きかけるフェーズに入っています。また、UNICによる「カーボンニュートラル革」への言及は、科学的根拠に基づく革のサステナビリティ訴求が新たな段階に入ったことを示しています。
中東情勢という地政学リスクはグローバルサプライチェーン全体に影響を与えますが、それでも革産業はパリコレのトレンドや世界的キャンペーンを通じて、「革を選ぶ」という消費行動の意義を世界中に届けようとしています。4月29日のワールドレザーデーに向けて、業界全体の機運が高まる4月を革業界は迎えようとしています。leather-note.comは、引き続き国内外の革業界の動向を丁寧に追い続けていきます。来週もぜひお楽しみに。
レザー・皮革業界関係者の皆様へ
革製品好きのユーザー
今週のニュースで一番うれしかったのは、やはりコブラヴァンプの復刻ではないでしょうか。1972年生まれの名作が、2026年の技術と感性で蘇る——これこそが革の醍醐味のひとつです。グッドイヤーウエルト製法の国産革靴は、履けば履くほど足に馴染み、ソール交換でさらに長く使い続けられます。また、パリコレで「愛着」がキーワードになっているように、長く使い込んで味が出るものを選ぶというライフスタイルが、ファッションの最前線でも支持されています。ぜひあなたの革製品も、大切に育てながら長く愛していただければ嬉しいです。
革事業者・ブランド担当者
今週の最重要トピックスは2つです。第一に、Leather Naturallyの「Make It Leather」キャンペーンは、自社のブランドコミュニケーションにも積極的に活用できます。「なぜ革を選ぶのか」「革が環境にとって実はどういう素材か」を自社のSNSやウェブサイトで発信することで、顧客との関係性をより深いものにできます。第二に、スパイバーの事例から「バイオ代替素材の商業化は想像以上に困難」という現実を再確認できます。天然革の本質的な価値——供給の安定性・加工技術の蓄積・経年変化という付加価値——を再評価し、強みとして打ち出す戦略を今こそ整備するタイミングです。4月29日のワールドレザーデーに向けて、業界一体の発信に加わりましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. コブラヴァンプって何ですか?なぜ話題になっているのですか?
コブラヴァンプとは、1972年にリーガルが日本市場向けに初めて生産した革靴「2167」の愛称です。つま先(ヴァンプ)の形状がコブラの頭に似ていることからこの名がつきました。国産革靴の歴史を象徴する存在として革靴ファンの間では伝説的なモデルで、今回ファセッタズムの落合宏理デザイナー監修のもと、グッドイヤーウエルト製法・牛革使いで復刻されました。国産・本革・修理可能という三拍子が揃った点でも注目されています。
Q2. スパイバーの「ブリュード・プロテイン」は革の代替素材だったのですか?
スパイバーのブリュード・プロテインは、クモの糸にヒントを得た人工タンパク質繊維で、ナイロンや合成繊維の代替となりうる素材として開発されました。革の直接代替というよりは、アウターウェアや機能性ウェアの分野での採用が中心でしたが、バイオサステナブル素材として革業界にも影響を与える可能性がある技術でした。今回の私的整理を経て、新会社のもとでどう事業が展開するか引き続き注目されます。
Q3. ワールドレザーデーとは何ですか?
ワールドレザーデーは、毎年4月29日に国際的な革産業団体「Leather Naturally」が主催する、革の価値を世界に発信する記念日です。2026年のテーマは「Make It Leather」で、生産者・デザイナー・小売業者・消費者が一体となって、革を意図的・責任的に選ぶという行動変容を促すキャンペーンが展開されます。SNSや各種メディアを通じた発信が世界規模で行われる予定です。
Q4. カーボンニュートラルな革の生産は本当に可能なのですか?
APLF香港にてUNIC(イタリア皮革業界団体)会長が「すでに実現している事例がある」と発言しました。革は食肉産業の副産物を原料とするため、その生産段階のカーボン排出量を適切にカウントすれば、排出量を非常に低く抑えることができます。さらに一部のタンナーでは再生可能エネルギーの導入や廃水処理の徹底が進んでおり、カーボンニュートラルの実現が技術的に見えてきています。科学的なLCAデータの整備が鍵となります。
Q5. 中東情勢は日本の革業界にも影響しますか?
影響は十分あり得ます。日本は牛原皮の多くをアメリカや南米などから輸入していますが、ホルムズ海峡を通過する石油の価格上昇はエネルギーコスト全般を押し上げ、なめし加工や輸送コストに波及します。また、日本の高級革製品ブランドにとっても、中東の富裕層はインバウンド購入・海外販売の重要な顧客層であり、需要の落ち込みは輸出に影響する可能性があります。情勢の変化を定期的にモニタリングしていきましょう。
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参考記事リンク
- リーガル ブーツマーク「2167 BM」復刻発売(FASHIONSNAP、2026年3月)
- 落合宏理デザイナーが「リーガル」のリブランディングを担当(WWDJAPAN)
- スパイバーが私的整理へ(WWDJAPAN、2026年3月25日)
- 2026-27秋冬パリコレ「愛着」の表現(WWDJAPAN、2026年3月23日)
- APLF 2026 Concludes(APLF、2026年3月26日)
- Q&A: World Leather Day 2026 – Make It Leather(Leather Naturally、2026年3月20日)
- Climate-positive leather – UNIC president at APLF(Leatherbiz/APLF、2026年3月20日)
- Leatherbiz Market Intelligence: Impressions of APLF, plus war worries(2026年3月26日)
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