「EUDR」「”Make It Leather”」「関税」——2026年3月最終週、革業界のキーワードはいずれも「革の正当性をどう守るか」という問いに収斂していきました。欧州では皮革産業が環境規制をめぐる歴史的な正念場を迎え、世界では革の価値を再定義するキャンペーンが本格始動。国内では1000年の歴史を誇る姫路レザーが新たな表現でその魅力を世界へ発信しました。今週もleather-note.com編集部が、皆様に届けたい革業界のニュースをお届けします。
目次
- ①姫路レザーコレクション2026開催——コシノミチコ×Novelbrightが彩る産地の夜
- ②第111回東京レザーフェア開催決定——2026年5月、浅草に皮革が集結
- ③COTANCE、EUDRから皮革除外を訴える「決定的瞬間」声明を発表
- ④ヒューマン・ライツ・ウォッチが反論——EUDRに革を残すよう欧州委員会に要請
- ⑤World Leather Day 2026「Make It Leather」キャンペーン世界展開中
- ⑥APLF 2026香港大会総括——中東情勢が革業界に影を落とす
- ⑦トランプ関税の余波——革製品・皮革業界の2026年価格動向
- 今週の総括・展望
- レザー・皮革業界関係者の皆様へ
- よくある質問(FAQ)
- 参考記事リンク
- 過去分はこちら!

①姫路レザーコレクション2026開催——コシノミチコ×Novelbrightが彩る産地の夜
2026年3月25日(水)、兵庫県姫路市のホテルモントレ姫路にて、体験型総合ステージイベント「姫路レザーコレクション2026」が開催されました。主催は姫路皮革製品推進協議会(姫高皮革事業協同組合・御着四郷皮革協同組合・西姫路にかわ皮革産業協同組合)、姫路市が共催しました。
国内皮革生産の約7割を占めるとされる姫路レザーを主役に、映像・芝居・ランウェイを融合させた昼夜二部制の舞台が繰り広げられました。世界的デザイナーのコシノミチコ氏が姫路レザーを使用した新作デザインを発表し、姫路市出身のロックバンド「Novelbright」のボーカリスト・竹中雄大氏が「姫路レザーニスト2026」を受賞。地元ブランド「ACUTO(アクート)」の新作約100点がランウェイで披露されるほか、地域の子どもや障がいのある人たちも舞台に参加する構成が注目を集めました。
📝 編集部コメント
姫路レザーコレクションの進化に目を見張ります。単なるファッションショーではなく「映像・芝居・ランウェイ」を連動させた体験型舞台という形式は、革産地のブランディングとして非常に先進的です。コシノミチコ氏という「ファッション界の巨人」と地域産業が本気でタッグを組む姿は、他の産地にとっても大きなヒントになるはずです。「素材」ではなく「文化・体験・価値」として革を訴求するこのアプローチは、革製品事業者が今後のマーケティングを考えるうえで参考になる視点です。
②第111回東京レザーフェア開催決定——2026年5月、浅草に皮革が集結
日本最大規模の皮革・皮革関連資材の展示会「第111回東京レザーフェア(TLF)」の開催日程が、2026年5月21日(木)〜22日(金)に決定しました。会場は例年通り、東京都立産業貿易センター台東館(東京都台東区花川戸)です。開催時間は21日が午前9時〜午後5時(受付終了16:30)、22日が午前9時〜午後4時(受付終了15:30)となっています。
協同組合資材連が主催する東京レザーフェアは、1970年の初開催から半世紀以上の歴史を誇り、タンナー・皮革卸・副資材メーカー・パーツサプライヤーが一堂に会する業界最大の商談・情報収集の場です。毎回、トレンドセミナーや革コンテストも同時開催され、次シーズンの素材トレンドを占う重要なイベントとして位置づけられています。
📝 編集部コメント
第111回という節目の回。2025-26年秋冬コレクションの素材開発が本格化するなか、5月のTLFは業界関係者にとって外せないイベントです。トランプ関税や原皮価格変動など不確実な外部環境が続く中、国内タンナーや資材メーカーが「何を提案するか」が注目されます。会場でリアルに素材に触れ、作り手と話すことの価値は今も変わりません。革製品事業者の皆様は、ぜひ来場登録を早めに行うことをおすすめします。
③COTANCE、EUDRから皮革除外を訴える「決定的瞬間」声明を発表
2026年3月31日、欧州タンナー連盟(COTANCE)は「革業界にとって決定的な瞬間」と題した声明を発表しました。これは、EU森林破壊防止規制(EUDR)の附属書IからHS第41類(原皮・皮革製品)を除外するよう求めるもので、米国・オーストラリア・アフリカ・ニュージーランドの業界団体が国際タンナーズ協議会(International Council of Tanners)のもとで結束し、EU委員長のフォン・デア・ライエン氏に連名書簡を送りました。
COTANCEのグスタボ・ゴンザレス=キハーノ事務局長は「革は森林破壊の原因ではない。食肉産業の副産物である皮革をEUDRに含めることは科学的根拠を欠く」と強調。2026年4月中に欧州委員会が施行パッケージを示す予定で、今後数週間が皮革業界の規制環境を左右する「窓」になると警告しています。EUDRは2026年12月30日に施行予定であり、業界にとって時間的猶予は限られています。
📝 編集部コメント
EUDRの議論は、日本の革業界にとっても他人事ではありません。欧州のタンナーが規制対応で苦しめば、イタリア・スペインなどからの高品質皮革素材の供給に影響が出る可能性があります。また「革は森林破壊の原因か否か」という議論は、天然皮革のサステナビリティ訴求に関わる本質的な問いです。COTANCEと環境NGOとの真っ向対立を冷静に見守りながら、日本の事業者としても自社の調達先のトレーサビリティについて今から備えを進めることが重要です。
④ヒューマン・ライツ・ウォッチが反論——EUDRに革を残すよう欧州委員会に要請
2026年3月30日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は環境・先住民族団体と連名で欧州委員会に書簡を送付し、EUDRの対象品目から皮革を除外しないよう強く求めました。HRWは「牛の肉が禁じられながら、同じ牛の皮が自由にEU市場で販売できるという状況は著しい政策的矛盾」と指摘し、ブラジルのパラグアイ・チャコなど違法な森林破壊と関連する原皮がEUに流入してきた過去の調査結果を示しています。
HRWは、皮革産業側のロビー活動によって欧州委員会が規制を骨抜きにしようとしていることへの強い懸念を表明。「科学的データと環境への影響に基づいた製品範囲を維持すべきだ」と訴えました。この書簡の発表はCOTANCEの声明の翌日にあたり、両者の対立は決定的な局面を迎えています。
📝 編集部コメント
EUDRをめぐる議論は、産業界と環境・人権NGOの真正面からの衝突になっています。どちらの主張にも一定の根拠があり、一筋縄ではいかない複雑な問題です。「革は食肉の副産物であり森林破壊の原因ではない」というCOTANCEの主張には学術的裏付けがある一方、「ブラジルの違法森林からの皮革がEUに入っている」というHRWの調査も具体的です。日本の革事業者にとっては、仕入れ先の透明性を高め、独自のトレーサビリティ体制を構築することが最大の「答え」になっていくでしょう。
⑤World Leather Day 2026「Make It Leather」キャンペーン世界展開中
Leather Naturallyが主導する「World Leather Day 2026」のテーマが「Make It Leather(革で作ろう)」と発表され、4月29日の世界革の日に向けたキャンペーンが世界規模で展開されています。このキャンペーンは単なる啓発活動にとどまらず、「量から価値へ」「使い捨てから耐久性へ」「トレンド消費から長期的な職人技へ」という革業界全体の意識変革を呼びかける戦略的な取り組みです。
Leather Naturallyのデータによると、毎年2億7000万枚以上の原皮が革に加工されており、食肉産業の副産物を有効活用することで膨大な廃棄物を削減しています。「少ない買い物・より良いものを」という哲学の体現者として経年変化を楽しめる革を位置づけるメッセージは、ファストファッションへの批判が高まる今日の消費者意識とも合致しています。
📝 編集部コメント
「Make It Leather」というスローガンのシンプルさと力強さは秀逸です。農家・タンナー・デザイナー・消費者まで「革のエコシステム全体」を一つの声でまとめようという試みは、日本の革業界にも大きな示唆を与えます。4月29日の世界革の日には、SNSでこのキャンペーンを積極的にシェアすることが、業界全体の訴求力向上につながります。革製品ユーザーの皆様も、お気に入りの革アイテムを#MakeItLeatherのハッシュタグで投稿してみてはいかがでしょうか。
⑥APLF 2026香港大会総括——中東情勢が革業界に影を落とす
世界最大級の皮革・ファッション素材見本市「APLF 2026」が3月12日〜14日に香港コンベンション&エキジビション・センターで開催されました。65か国以上から90名を超えるバイヤーが参加し、約1000件のビジネスマッチングセッションが実施されました。NextGen Fashion Materials Tech Talk、LHCA・Leather Leaders・Leather Naturallyによるセミナーなど、教育プログラムも充実した内容となりました。
ただし、Leatherbizのマーケットインテリジェンス(3月26日付)によると、今回のAPLFは過去と比較して出展者数が減少しており、中東情勢の悪化による渡航計画の乱れが影響したと分析されています。エネルギーコスト上昇、物流の複雑化、そして中東市場への需要影響が、今後の革業界の大きなリスク要因として浮上しています。次回APLFは2027年3月31日〜4月2日に香港で開催予定です。
📝 編集部コメント
APLFは依然として国際的なビジネスの重要な場であり続けていますが、中東情勢という予期せぬリスクが表面化した回となりました。中東は高級車内装から高級バッグ・革靴まで、本革製品の主要消費地の一つです。この地域の情勢が長引けば、欧州・アジアの皮革メーカーにとって無視できない市場縮小につながりかねません。地政学リスクをサプライチェーン戦略に組み込む必要性を改めて感じます。
⑦トランプ関税の余波——革製品・皮革業界の2026年価格動向
2025年以来続くトランプ政権の関税政策は、2026年に入っても革製品業界への影響を及ぼし続けています。米連邦最高裁が2026年2月20日にIEEPA関税を違憲とする判決を下した後、代替として2026年2月24日から1974年通商法第122条に基づく全世界一律10%の追加関税が発動されています。革靴・バッグの主要輸出国(中国・ベトナム・インド・イタリア)はいずれも影響を受けています。
業界アナリストは、2026年が「本当の意味で圧力がかかる年」と見ています。革靴・アクセサリー価格は今後1〜2年で最大22%上昇する可能性があるとの予測もあり、Tapestry(Coachの親会社)は関税関連コストが約1億6000万ドルに達すると投資家に説明しています。また、米国の牛の頭数が1950年代以来の最少水準にあることから、原皮の供給不足も価格上昇に拍車をかけています。
📝 編集部コメント
関税問題は「アメリカだけの問題」ではなく、グローバルなサプライチェーンを通じて日本の革製品業界にも影響します。特に、米国向けに革製品を輸出している日系ブランドや、輸入革製品を取り扱う事業者にとっては仕入れコストの上昇が現実問題として迫っています。「価値ある本革製品」を適正価格で提供するストーリーをしっかり構築できているブランドは、この逆境でも消費者の支持を維持できるでしょう。価格競争ではなく価値訴求で差別化する時代が加速しています。
今週の総括・展望
2026年3月最終週から4月第1週にかけて、革業界のニュースは大きく3つの軸で展開しました。
第一の軸は「規制環境の緊迫化」です。EUDRをめぐるCOTANCEとHRWの真正面からの衝突は、2026年4月に予定される欧州委員会の施行パッケージ発表によって一つの結論を迎えます。このわずか数週間が、欧州の皮革産業の将来を大きく左右する可能性があります。どちらの主張が採用されるとしても、供給網のトレーサビリティ整備はもはや選択肢ではなく必須の課題です。
第二の軸は「革の価値の再定義」です。World Leather Dayの「Make It Leather」キャンペーン、姫路レザーコレクションの「文化・体験・価値としての革」は、いずれも同じ方向を指しています。革は今、「単なる素材」から「生き方の選択」へと再定義されようとしています。この潮流は、本革の本質的な価値——経年変化・耐久性・職人技——を愛するすべての人にとって追い風です。
第三の軸は「コスト圧力の現実化」です。トランプ関税の継続影響、原皮不足、エネルギーコスト上昇が重なる2026年は、革製品の価格上昇が避けられない局面に入っています。生産者・ブランド・消費者のすべてがこの現実と向き合う年となりそうです。しかしその一方で、革の「長く使える価値」は価格上昇の正当な理由にもなります。適正な価格でより良いものを選ぶ——この流れは、長い目で見れば業界全体の底上げにつながるはずです。
来週は4月。欧州委員会のEUDR施行パッケージの動向、そして5月の東京レザーフェアに向けた各社の動きに注目が集まります。leather-note.comは、引き続き国内外の革業界の動向を丁寧に追い続けていきます。来週もぜひお楽しみに。
レザー・皮革業界関係者の皆様へ
革製品好きのユーザー
「Make It Leather」——世界中の革業界が一つの声でこう呼びかけています。ファストファッションが溢れ、使い捨て文化が当たり前になった時代だからこそ、長く使い込むことで自分だけの表情になっていく本革の価値が改めて輝いています。今年の秋冬ファッションのキーワードは「愛着」と「継承」です。棚の奥に眠っているお気に入りの革アイテムをもう一度取り出して、手入れしてみてはいかがでしょうか。使い込むほどに育つ革の奥深さを、4月29日の世界革の日に改めて感じてみてください。
革事業者・ブランド担当者
今週のニュースは、事業者の皆様に重要な示唆を与えています。EUDRのトレーサビリティ要件は、EU向け輸出に限らず業界全体のスタンダードになっていく流れです。今のうちから仕入れ先の情報整備を進めることが、将来の競争優位につながります。また、関税や原皮コスト上昇による価格上昇局面では、「なぜこの革製品がこの価格なのか」を明確に伝えるストーリーがこれまで以上に重要です。姫路レザーコレクションが示すように、産地・職人・デザイナーをつなぐ「体験型の価値訴求」は、消費者の共感を生む強力な手法です。5月の東京レザーフェアも、情報収集と商談の絶好の機会です。ぜひ積極的にご活用ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. EUDRとは何ですか?日本の革業界にも影響しますか?
EUDRは「EU森林破壊防止規制(EU Deforestation Regulation)」のことで、森林破壊に関連する土地で生産された農産物・製品をEU市場で販売・輸出することを禁じる規制です。現在、牛の皮革(HS第41類)が規制対象品目の附属書Iに含まれており、欧州のタンナーはトレーサビリティの確保が求められています。日本の革業界への直接的な影響は現時点では限定的ですが、欧州産の高品質皮革素材の供給に影響が出る可能性があること、また将来的に日本でも同様の規制議論が起きうることを考えると、他人事とは言えません。
Q2. 「Make It Leather」キャンペーンに参加するにはどうすればよいですか?
Leather Naturallyの公式サイト(leathernaturally.org)に世界革の日のデジタルハブが開設されており、ソーシャルメディア用の画像・資料・ファクトシートなどのツールキットが公開されています。業界関係者はこれらの素材を活用してSNSで発信することができます。一般の革好きユーザーの方は、お気に入りの革アイテムを「#MakeItLeather」「#WorldLeatherDay」のハッシュタグとともに投稿することで、キャンペーンを応援できます。
Q3. トランプ関税で革製品の値段はこれからどのくらい上がりますか?
業界アナリストは、革靴・アクセサリー類が今後1〜2年で最大22%程度値上がりする可能性を指摘しています。ただしこの数字はブランドや品目によって大きく異なり、すでに供給先を見直している企業では影響が限定的なケースもあります。確実に言えることは、原皮コスト・加工コスト・輸送コストのすべてが上昇傾向にあるため、価格プレッシャーはしばらく続くということです。消費者の皆様にとっては、「長く使える良いもの」を選ぶことが、結果的にコストパフォーマンスの高い選択になります。
Q4. 姫路レザーとはどのような革ですか?
姫路レザーは、兵庫県姫路市を中心とする地域で生産される皮革製品の総称で、1000年以上の歴史を持つ日本最大の革産地が生み出す素材です。国内の皮革生産の約7割を占めるとも言われており、白なめし(しろなめし)という独自の技術で生産される白い革が特に有名です。タンナー(皮革製造業者)から革製品メーカーまで集積し、靴・バッグ・手袋・ベルトなど幅広い製品が生産されています。高い品質と歴史的な技術力を誇り、「Japan Leather」の代名詞的存在です。
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参考記事リンク
- 姫路市|姫路レザーファッションショー2026が開催されます(2026年1月)
- NEWSCAST|「姫路レザーコレクション2026」開催(2026年1月)
- 東京レザーフェア公式サイト|第111回 東京レザーフェア(2026年5月21日〜22日)
- APLF|COTANCE – A decisive time for the leather industry(2026年3月31日)
- Human Rights Watch|Calls to maintain leather within the scope of EUDR(2026年3月30日)
- Leather Naturally|Q&A: World Leather Day 2026 – Make It Leather(2026年3月20日)
- APLF|APLF 2026 Concludes After 3 Days(2026年3月26日)
- Leatherbiz Market Intelligence|Impressions of APLF, plus war worries(2026年3月26日)
- CNBC|Tariffs hit boots, bags and more as leather prices jump(2025年12月)
- 経済産業省|米国関税対策ワンストップポータル(2026年3月)
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