【26年3月6日〜12日】今週の革業界ニュースまとめ|APLF2026閉幕・「Make It Leather」始動など業界動向を解説

3月第2週、革業界は世界最大級の皮革見本市APLF 2026が香港で閉幕したほか、Leather Naturallyが「Make It Leather」キャンペーンを発表するなど、国際的な動きが活発な一週間となりました。ラボグロウンレザー市場の将来予測も大きな注目を集めており、「本革の価値」と「代替素材の台頭」という2つの流れが交差する局面を迎えています。革に関わるすべての方に今週の動向をお届けします。

目次

APLF公式サイトより引用 aplf.com

① APLF 2026 香港が3日間の幕を閉じる――業界の「今」が凝縮

2026年3月12日(木)〜14日(土)の3日間、香港コンベンション&エキシビションセンターにてAPLF(アジアパシフィック・レザーフェア)2026が開催されました。1984年創業の同見本市は、タンナー・原皮・ファッションアクセサリーなど革のサプライチェーン全体をカバーする世界最大規模の皮革総合展示会のひとつです。

今回のAPLF 2026では、750社以上の出展者が世界100カ国以上のバイヤーと商談を展開。ビジネスマッチングセッションは約1,000件が組まれ、65カ国以上から参加した90社超のバイヤーが100%参加を達成したことが主催者から発表されました。セミナープログラムとして「NextGen Fashion Materials Tech Talk」や、LHCA(米国皮革・原皮協議会)、Leather Naturally等の業界団体によるセッションが展開されるなど、サステナビリティと革新が最大のテーマとなりました。APLF 2027は2027年3月31日〜4月2日の開催が予定されています。

💬 編集部コメント
APLFはアジア太平洋地域のバイヤーが特に多く集まる国際見本市であり、その成否は世界の革市場の体温計といえます。今回の「65カ国以上から参加・1,000件のマッチング」という数字は、コロナ禍以降の回復が着実に進んでいることを示しています。日本のタンナーや革製品メーカーにとっても、「どんなバイヤーが世界で動いているか」を知るうえで欠かせない情報源です。アジアを中心とした高級品需要の拡大という構造的トレンドは、国内の革産業にとってもポジティブな追い風として読み取れます。


② 「Make It Leather」キャンペーン始動――世界革業界が一致団結

革業界の国際的な啓発機関であるLeather Naturallyは、2026年4月29日の「ワールド・レザー・デー」に向けて、新グローバルキャンペーン「Make It Leather(革で作ろう)」を発表しました。このキャンペーンは、ファストファッション・使い捨て文化に対抗し、「量より質」「流行より耐久性」「トレンドよりクラフツマンシップ」へとシフトすることを世界に呼びかけるものです。

Leather Naturallyは今回、専用のデジタルハブを新設し、ファクト・ミス情報の訂正・アドボカシー素材を一元配信。農家・タンナー・ブランド・デザイナー・消費者まで、革に関わる「全ての人」を巻き込む設計となっています。キャンペーンは4月29日だけでなく、年間を通じた「常時稼働型」として展開されます。国際インフルエンサーとの連携や、SNS・PRの一斉展開が予定されており、業界全体のブランドイメージ向上を目指しています。

💬 編集部コメント
「革は環境に悪い」「動物を傷つける」といった誤解は、残念ながら若い世代を中心に広がっています。実は革は食肉産業の副産物であり、毎年2億7,000万枚以上の原皮がリサイクルされています。「Make It Leather」はそうした「革の真実」を正面から発信する取り組みです。革製品ユーザーの方は「長く使える良質なものを選ぶ」という行動自体が、このキャンペーンの趣旨と完全に一致します。革のお手入れを習慣化することで製品寿命を延ばすことも、大切な参加方法のひとつです。


③ ラボグロウンレザー代替市場、2036年に685億円規模へ――急成長予測の衝撃

市場調査会社Future Market Insights(FMI)が3月20日に発表したレポートによると、ラボグロウン(実験室培養)レザー代替アパレル市場は2026年の9,240万ドル(約145億円)から2036年には6億8,570万ドル(約1,077億円)へ、年平均成長率(CAGR)22.1%の急成長が予測されています。成長を牽引するのは、バイオテクノロジーへの投資拡大・ESGコンプライアンス要件の高まり・ファッション業界のサステナブル素材シフトの3点です。

同レポートによると、素材タイプ別では「培養コラーゲンレザー」が市場の約41.6%を占めリード。既存のタンナー設備(なめし機械等)とほぼ互換性があることが普及を後押ししています。また、ラボグロウンレザーは均一な厚みで天然の傷(スカー)がなく、裁断ロスを大幅に削減できる点も、高級品メーカーのコスト計算に有利に働くとされます。ラグジュアリーファッション分野でのシェアが約44.8%と最大で、日本も成長が速い国のひとつとして挙げられています。

💬 編集部コメント
「ラボグロウンレザー」と聞くと遠い未来の話に感じますが、2026年時点ですでに市場規模は9,000万ドルを超えています。ただ、業界人として冷静に見ると、「本革の素晴らしさ」はラボでは再現できない経年変化・手触り・物語性を持っています。重要なのは「どの市場セグメントを狙うか」。量産品・コスト重視の用途では代替素材が台頭しても、真のクラフツマンシップを求めるセグメントでは本革の価値は下がりません。事業者の方々はこのデータを「脅威」ではなく「本革の差別化ポイントを磨く理由」として活用してください。


④ APLF Design-a-Bagコンペ2026、ベトナム人学生が初のグランプリ獲得

APLF 2026の最終日、3月12日に実施されたDesign-a-Bag Competition 2026の最終審査で、ベトナム・ホアセン大学のデザイン学生ファン・グエン・ホアイ・トゥオンさんが、作品「The Unbowed Bag(折れないバッグ)」でグランプリを受賞しました。

「The Unbowed Bag」は「混沌の中の忍耐・強さ・揺るぎない精神」を象徴するデザインで、これがトゥオンさんにとって初めてのデザイン作品であったことも審査員を驚かせました。2025年11月のAPLF ASEAN大会でベトナム代表として優勝し、今回のグローバル大会へ進出したという背景も注目を集めています。グランプリの賞品として、イタリア・ミラノのArsutoria Schoolでの4週間コレクション開発デザインコース(4,500ユーロ相当)が贈られます。

💬 編集部コメント
東南アジアから次世代の革デザイナーが世界の舞台を席巻する――このニュースは、革業界の「人材地図」が変わりつつあることを象徴しています。ベトナムはすでに世界有数の革製品製造国であり、そこから世界水準のデザイナーが誕生したことは非常に意義深いです。日本のブランドや職人もこうした国際コンペに目を向けることで、グローバルな感性とのクロスオーバーが生まれる可能性があります。


⑤ イタリア皮革業界トップが「カーボンニュートラル革」の実現を宣言

APLF 2026期間中(3月12〜14日)の会議で、イタリアタンナー業界の代表機関UNICのファブリツィオ・ヌーティ会長が、「カーボンニュートラルな革を生産するタンナーの事例が、すでに記録されている」と発言し、業界内で大きな反響を呼びました。

ヌーティ会長は「サステナビリティへの唯一の信頼できる道は、科学とデータで証明された素材をブランドが購入することだ」と強調。天然革の持続可能性を科学的に証明しようとする業界の取り組みが、今や「宣言」から「実証」の段階に入ったことが改めて示されました。合成素材や代替革との比較において、本革のLCA(ライフサイクルアセスメント)による優位性を示すデータ整備が急務とされており、イタリア・ブラジルなどの主要産地が主導しています。

💬 編集部コメント
「革はサステナブルではない」という誤解への反論が、ついに科学データをもって発せられました。食肉産業の副産物を活用し、適切になめしと管理を行えば、革は非常に長持ちする素材です。このニュースは革製品ユーザーにとっても朗報で、「良い革製品を長く使う」ことが環境貢献につながるという主張が、業界のエビデンスで裏付けられつつあります。日本のタンナーも環境対応を積極的に発信することで、国際競争力の強化につながるでしょう。


今週の総括・展望

3月6日〜12日の一週間は、「本革の価値を守る」と「代替素材が加速する」という二つの大きな流れが同時進行した週でした。

APLF 2026の閉幕が象徴するように、世界の革業界は「サステナビリティ」をキーワードに一致団結する姿勢を鮮明にしています。Leather Naturallyの「Make It Leather」キャンペーン、UNICによるカーボンニュートラル革の事例報告、そして次世代デザイナーの台頭は、革が「過去の素材」ではなく「未来を見据えた素材」であることを力強く示しています。

一方でラボグロウンレザーの市場予測(2036年に約1,077億円規模)は無視できません。ただし、同市場の主軸は「均一品質・大量生産・コスト削減」を求めるセグメントであり、経年変化や職人技を軸とする本革の世界とは棲み分けが進むと考えられます。

日本市場への示唆としては、①輸出機会の拡大(アジア太平洋のバイヤーが活発)、②「Made in Japan」の付加価値訴求の重要性向上、③サステナビリティを科学的データで発信する必要性、の3点が挙げられます。春の新生活シーズンを迎え、革製品への関心が高まるこの時期に、革業界全体で「本革の正しい価値」を発信していくことが求められています。


よくある質問(FAQ)

Q1. APLFとはどんな展示会ですか?

APLF(Asia Pacific Leather Fair)は1984年創設の国際皮革見本市で、毎年香港で開催されます。タンナー(革製造業者)から革問屋、ファッションブランドまで、サプライチェーン全体が一堂に会する場として世界最大規模のひとつに数えられます。2026年は3月12〜14日に開催され、100カ国以上・10,000人超のバイヤーが参加しました。

Q2. 「Make It Leather」キャンペーンに一般消費者も参加できますか?

はい、参加できます。Leather Naturallyが立ち上げたデジタルハブ(leathernaturally.org)では、ファクトシートや革に関する正しい情報が誰でも閲覧できます。また、4月29日のワールド・レザー・デーに向け、SNSでの情報拡散や「革製品を長く使う」という消費行動自体がキャンペーンの参加につながります。

Q3. ラボグロウンレザーは本革と何が違うのですか?

ラボグロウンレザーは動物の細胞をバイオリアクター(培養槽)で培養し、革に近い素材を作る技術です。動物を飼育・屠畜せずに製造できる点や、均一な品質・サイズが得られる点が特長です。ただし、天然革のような経年変化(エイジング)や個体差の味わい、長年の職人技による風合いは現時点では再現が難しく、本革とは異なるカテゴリーの素材として発展していくと考えられます。

Q4. カーボンニュートラルな革はすでに存在するのですか?

APLF 2026でイタリアのUNIC会長が発言したように、一部のタンナーがカーボンニュートラルな革生産を実現した事例が出始めています。革は食肉産業の副産物であるため、適切な廃棄物処理・再生可能エネルギーの活用・なめし工程の最適化などを組み合わせることで、環境負荷を大幅に低減できます。ただし、広く普及するには科学的なLCA(ライフサイクルアセスメント)データの整備が引き続き必要です。

Q5. 革製品を長く使うためのポイントは何ですか?

定期的なクリーニング・保湿・防水処理が基本です。使わないときは型崩れを防ぐシューツリーや詰め物を活用し、直射日光・高温多湿を避けた保管を心がけましょう。また、汚れが目立つ前に早めにケアすることが、革の寿命を大きく左右します。適切なメンテナンスを行えば、本革製品は数十年にわたって使い続けることが可能です。