「ILM最新号がロールス・ロイスのレザーに迫る」「EUDR除外提案の公開協議開始」「第111回東京レザーフェア開幕まで残り約10日」——2026年5月第2週の革業界は、最高級自動車インテリアにおける皮革の未来、欧州規制をめぐる新局面、そして国内最大の皮革見本市への期待が交錯した、示唆に富む1週間となりました。国内では繊研新聞がKIYOKAWAデザイナーへのインタビューを掲載し、日本の革バッグ製造の現場と志が改めて注目を集めました。今週もleather-note.com編集部が、皆様にお届けしたい革業界のニュースをまとめてお届けします。
目次
- ①ILM 5・6月号発刊——ロールス・ロイス・モーター・カーズの革の未来と、COTANCE新事務局長の展望
- ②EUDR除外提案の公開協議開始——6月1日締め切り、皮革業界に残る課題
- ③繊研新聞が「KIYOKAWA」デザイナー松村美咲さんに迫る——墨田発、日本の物作りを未来ある職業に
- ④第111回東京レザーフェア、5月21〜22日いよいよ開幕——第16回革のデザインコンテスト2026も始動
- ⑤BONAVENTURA(ボナベンチュラ)、5月もPRリリース——ミラノ発レザーブランドの国内展開を加速
- ⑥ILM報告:ブラジルタンナー「ボルザーノ・ブラジル」訪問——南米から世界へ続く原皮サプライチェーン
- ⑦革のトレーサビリティ標準化が加速——COTANCEとWegaが自動車向けデジタル追跡を推進
- 今週の総括・展望
- レザー・皮革業界関係者の皆様へ
- よくある質問(FAQ)
①ILM 5・6月号発刊——ロールス・ロイス・モーター・カーズの革の未来と、COTANCE新事務局長の展望
2026年5月14日、国際皮革業界の主要メディア「International Leather Maker(ILM)」の5・6月合併号がデジタル版で公開されました。今号の目玉は、ロールス・ロイス・モーター・カーズのインテリア・トリム・センター担当ゼネラルマネージャーCharoltte Veal氏と、ビスポーク開発マネージャーのVictoria Sherratt氏へのインタビューです。世界最高峰の超高級車が革内装の未来についてどのように考え、設計しているかが詳細に語られています。さらに、COTANCE(欧州製革連合)の新事務局長Edoardo De Paola氏が登場し、今後の皮革業界を牽引する視点が示されています。また、自動車レザーのトレーサビリティをデジタル技術で変革するWegaのRoberto Mastrotto氏の報告や、自己修復レザーフィニッシュ、ELV指令など技術トピックも豊富な内容となっています。

📝 編集部コメント
ロールス・ロイスが「革の未来」について語ることは、業界全体の方向性を示すうえで非常に示唆深いです。同社は超高級車のインテリアにおいてほぼすべて天然皮革を使用し、その調達・選定プロセスは世界でも最も厳格とされています。EV化が進む中でも、最高峰のブランドが「本物の革」を選び続けていることは、革製品ユーザーにとっても、革事業者にとっても、大きな心強さをもたらすニュースではないでしょうか。また、新COTANCE事務局長の就任は、EUDR除外という大きな転換期と重なるタイミングであり、今後の業界代表組織の動きに注目が集まります。
②EUDR除外提案の公開協議開始——6月1日締め切り、皮革業界に残る課題
2026年5月4日に欧州委員会が公表した「EU森林破壊防止規則(EUDR)」改正委任法案に関する公開協議が、5月第2週も継続中です。この委任法案では、皮革・原皮・スキンをEUDRの規制対象から除外する提案が盛り込まれており、協議の締め切りは2026年6月1日となっています。業界団体COTANCEやUNIC(イタリアタンナーズ協会)は、この除外をNGOを含む利害関係者に対し積極的に説明するとともに、可決後もトレーサビリティ推進への取り組みを継続する姿勢を示しています。一方、Fern(環境NGO)などはこの除外提案が環境保護の観点から問題があると批判しており、法案の最終的な発効までには一定の議論が続く見通しです。EUDRの本格適用は2026年12月30日(大企業・中規模企業)、2027年6月30日(中小企業)に設定されており、今後数か月の動向が業界全体の基準を左右することになります。
📝 編集部コメント
EUDR除外は「業界の勝利」と喜ばれていますが、注意すべきは「まだ確定ではない」という点です。委任法案の公開協議を経て、欧州委員会が正式に採択して初めて法的効力が生じます。しかもEUDRの施行日(12月30日)は変わらないため、タンナーや革製品メーカーが安心して準備をやめてよい状況ではありません。むしろ、トレーサビリティの取り組みを止めることなく継続することが、除外後も競争力を維持する鍵です。革を扱う事業者の方は、この協議期間にパブリックコメントを提出する機会を積極的に活用されることもお勧めします。
③繊研新聞が「KIYOKAWA」デザイナー松村美咲さんに迫る——墨田発、日本の物作りを未来ある職業に
2026年5月22日付け(5月第2週末時点でオンライン公開)の繊研新聞が、東京・墨田区吾妻橋を拠点とするレザーバッグブランド「KIYOKAWA(キヨカワ)」のデザイナー・松村美咲さんを特集しました。KIYOKAWAは1960年創業の清川商店が2019年に立ち上げたブランドで、「革と金具はすべて国内産」にこだわり、姫路タンナーと協力した独自のグラデーション染色、職人が一本一本手磨きするがま口の口金など、細部まで職人の仕事が宿る製品を展開しています。松村さんは「素材にも職人がいることを伝えたい」「日本の物作りを未来ある職業にしたい」と語っており、繊研新聞の記事は国内革産業のブランド構築と職人継承という重要なテーマに切り込んでいます。同ブランドは2026年4月に大丸東京でのポップアップを実施し、3月にはパリの合同展示会「トラノイ・パリ」にも日本皮革産業連合会のブースから出展しました。
📝 編集部コメント
KIYOKAWAの取り組みは、「Made in Japan」を単なるキャッチコピーではなく、素材・金具・加工すべてのトレーサビリティとして体現している点で特筆に値します。姫路タンナーとの協業は、消費者が革製品を通じて産地とつながる体験を作り出しており、leather-note.comが大切にする「革への理解・愛着」にも直結しています。百貨店でのポップアップや海外展示会への出展は、国内ニッチブランドが高付加価値路線でグローバルに挑む好例です。この挑戦を応援したいと強く思います。
④第111回東京レザーフェア、5月21〜22日いよいよ開幕——第16回革のデザインコンテスト2026も始動
5月第2週は、いよいよ来週に迫った「第111回東京レザーフェア(TLF)」への注目が業界内で高まった1週間でもありました。会期は2026年5月21日(木)〜22日(金)、会場は都立産業貿易センター台東館4〜7階(東京都台東区花川戸2-6-5)です。日本最大規模の皮革・皮革関連資材の展示会として半世紀以上の歴史を誇り、今回は革靴JIS規格改訂プロジェクトが議題として取り上げられることも注目です。また、展示会に連動する「第16回革のデザインコンテスト2026」の応募受付もこの時期にスタートしており、クリエイティブ部門(6月1日〜9月10日)・プロダクト部門(6月1日〜30日)の公募が始まります。事前登録制で一般来場者も入場可能です。
📝 編集部コメント
東京レザーフェアは業界のプロだけでなく、革好きな一般の方にとっても最先端トレンドを肌で感じられる貴重な機会です。次シーズンの素材トレンドが並び、国内外のタンナーやメーカーが一堂に会するこの場は、革業界の「今」を感じる絶好の場所。革靴のJIS規格改訂が議題に上がっていることも、品質基準の国際的な底上げという点で重要な動きです。leather-note.comも今後レポートを予定しています。
⑤BONAVENTURA(ボナベンチュラ)、5月もPRリリース——ミラノ発レザーブランドの国内展開を加速
ミラノ発のラグジュアリーレザーブランド「BONAVENTURA(ボナベンチュラ)」が、2026年5月12日にPR TIMESでプレスリリースを配信しました。同ブランドは2013年創業で、ヨーロッパ最高級の皮革を使ったスマートフォンケース・財布・バッグ・カードケースなど、上質かつ機能的な革製品をEC中心に展開。日本市場でも右肩上がりの認知を誇ります。5月末まで御殿場プレミアム・アウトレットでのポップアップ(EAST ZONE 2345区)を継続中のほか、アップサイクルレザーを活用した限定ノベルティの配布も行っており、サステナビリティへの取り組みも積極的に訴求しています。なお、同ブランドはエルメスと同じタナー(なめし革製造者)のレザーを採用していることでも知られており、「高品質を知る人が使うブランド」としての位置付けが定着しています。
📝 編集部コメント
BONAVENTURAの快進撃は、「本物の革素材×EC直販×価格の透明性」というモデルが日本市場でも機能することを示しています。百貨店にはなかなか並ばない欧州クラフトレザーが、オンラインで手の届く価格帯で展開されていることで、新たな革ファン層を開拓していると言えます。アップサイクルレザーのノベルティ採用など、サステナビリティへの配慮も消費者の共感を呼んでいます。
⑥ILM報告:ブラジルタンナー「ボルザーノ・ブラジル」訪問——南米から世界へ続く原皮サプライチェーン
ILM 5・6月号には、編集長Megan Thomas氏によるブラジル訪問レポートも収録されており、ブラジルの大手タンナー「Bolzano Brasil(ボルザーノ・ブラジル)」の工場取材が特集されています。ブラジルは世界最大の牛革輸出国の一つであり、牛の屠畜数・原皮生産量ともに世界トップクラスを誇ります。一方でアマゾンの森林破壊との関連も指摘されており、環境NGOのEarthsightが「ブラジル産原皮の一部は違法に森林を破壊した土地で育てられた牛に由来する可能性がある」と指摘していることも事実です。ILMの現地取材は、この課題と向き合いながらも持続可能な生産に取り組む南米タンナーの実態を伝えるものとして、業界内外から注目されています。EUDRから革が除外されることが決まりつつある中でも、原皮サプライチェーンの透明性確保は引き続き最重要課題と言えます。
📝 編集部コメント
「革はEUDRから除外された=環境問題はクリア」という誤解は、業界内でも外でも払拭する必要があります。除外はあくまで規制の適用範囲の話であり、実際に南米産原皮の一部が森林破壊と無関係でないという指摘は残り続けています。日本の消費者や革製品ユーザーにとっても、使う革がどこから来たのかを知る権利があります。ILMのような業界メディアが現地取材を通じてこの問題を報じていることは、業界の透明性を高める上で非常に大切な役割を果たしています。
⑦革のトレーサビリティ標準化が加速——COTANCEとWegaが自動車向けデジタル追跡を推進
ILM 5・6月号では、自動車レザー向けのデジタルトレーサビリティ推進の動きも特集されています。COTANCE傘下の「レザー・トレーサビリティ・クラスター」は、皮革のサプライチェーン認証を共通化するための取り組みを進めており、CEN(欧州標準化委員会)での正式規格認定(EN 18199)を目指しています。さらに、イタリアのタンナーグループWegaのゼネラルマネージャー・Roberto Mastrotto氏は、デジタルID・計測データ・品質データの統合によって自動車向けレザーのサプライチェーンを透明化する取り組みを報告しました。EUDRの規制緩和が進む一方、消費者・自動車メーカー・ブランドからのトレーサビリティへの要求は今後もむしろ高まっていく見通しで、デジタル技術を活用した革の「見える化」は、業界の次なる標準になりつつあります。
📝 編集部コメント
自動車レザー向けのデジタルトレーサビリティは、最終的には革財布・革バッグにも波及する可能性があります。「この革はどの牧場の牛か」「どのタンナーでなめされたか」という情報が、QRコードやデジタルIDで追跡できるようになれば、革製品の価値評価の方法が根本から変わるかもしれません。日本の革産業も、このグローバルな標準化の流れを早めに把握し、対応の準備を始めることが重要です。leather-note.comでも引き続き、この動向を追っていきます。
今週の総括・展望
2026年5月第2週の革業界を振り返ると、「規制環境の転換期」と「ものづくりの現場の活況」が同時進行しているという構図がはっきり見えます。
EUDRをめぐる動きは、皮革業界がこれほど組織的に、これほど長期にわたってロビー活動を展開し、実際に結果を出した稀な事例として業界史に刻まれるでしょう。しかしその一方で、「除外=免罪符」ではなく、透明性・トレーサビリティへの投資を続けることが中長期的な競争力に直結することも、本号ILMの特集が示すとおりです。
国内では、東京レザーフェアの直前という高揚感の中、KIYOKAWAのような「Made in Japan」を体現するブランドが着実に存在感を高めています。姫路のタンナーと職人の仕事が、東京の工房を経て世界のステージへと届く——こうした川下・川上の連携こそが、日本の皮革産業の強みを磨く道だと改めて感じます。
5月後半は東京レザーフェアを筆頭に、国内外で皮革業界の動きが活発になります。leather-note.comでは引き続き、毎週の情報をまとめてお届けしますので、どうぞお楽しみに。
レザー・皮革業界関係者の皆様へ
革製品好きのユーザーへ
「自分の財布やバッグの革は、どこから来ているのだろう?」——今週のニュースを読んで、そんな疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません。EUDRのニュースは難しそうに見えますが、本質は「私たちが使う革のサプライチェーンを透明にしよう」というものです。KIYOKAWAのように「革も金具も国産」を徹底するブランドや、ロールス・ロイスのように素材の出自を厳格に管理するブランドの存在は、革製品を選ぶ際の大切な視点を教えてくれます。「どこで、誰が、どんな素材で作ったのか」を意識して革製品と向き合うことが、革の魅力をさらに深く楽しむ入口になりますよ。
革事業者・ブランド担当者へ
今週の最大の示唆は、「EUDRから除外されたことに安心しすぎるリスク」です。消費者・バイヤー・自動車メーカーのトレーサビリティへの要求は法規制より先に動いており、デジタルIDや認証の標準化(EN 18199)が急ピッチで進んでいます。また、ILMのブラジルタンナー取材が示すように、サプライチェーンの上流情報はメディアを通じて可視化されつつあります。5月後半に向け、東京レザーフェアで最新の素材トレンドと業界の空気感を肌で感じることはもちろん、EUDRの公開協議(〜6月1日)への意見提出や、自社のトレーサビリティ対応の現状確認も、この時期に進めておくことをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q1. EUDRから皮革が除外されたら、革製品は「環境に悪い」という批判がなくなりますか?
残念ながら、そういうわけではありません。EUDRからの除外は規制の適用範囲の変更であり、皮革の環境負荷に関する議論がなくなるわけではありません。一部のNGOは引き続き、ブラジル産原皮と森林破壊の関係性を指摘しています。業界としてトレーサビリティの推進や持続可能な調達の取り組みを続けることが、長期的な信頼につながります。
Q2. 東京レザーフェアは一般の革好きでも入場できますか?
はい、事前登録を行えば一般の方も入場できます。公式サイト(tlf.jp)の登録フォームから事前登録し、参加票を印刷してご持参ください。会場は都立産業貿易センター台東館(浅草駅徒歩5〜8分)で、2026年5月21日・22日の開催です。最新の素材トレンドやデザインコンテスト作品を間近で見ることができる絶好の機会です。
Q3. ロールス・ロイスはなぜ天然皮革にこだわるのですか?
ロールス・ロイスは超高級車のインテリアにおいて、素材の質感・耐久性・経年変化による風合い(パティナ)を極めて重視しています。合成皮革では再現できない「生きた素材」としての革の特性が、顧客の求める「最高の贅沢」に直結するためです。同社はファームとの長年の関係を通じて厳選した原皮のみを使用し、選定プロセスも非常に厳格です。また、ILMの報道によれば、ビスポーク(特注)プロセスでは絵画のように彩色した革内装も提供されており、革のキャンバスとしての可能性を最大限に引き出しています。
Q4. 「革のデザインコンテスト2026」に参加するにはどうすればよいですか?
第16回革のデザインコンテスト2026は、クリエイティブ部門(2026年6月1日〜9月10日必着)とプロダクト部門(2026年6月1日〜30日、当日消印有効)の2部門があります。詳細は公式サイト「革コン!」(kawalove.com)でご確認ください。プロ・アマ問わず応募可能な部門もありますので、革に関わるすべての方にとって腕試しの機会となっています。
Q5. 「革のトレーサビリティ」とは具体的に何を意味しますか?
革のトレーサビリティとは、原皮(どの農場の牛か)から、なめし(どのタンナーで加工したか)、製品化(どの工場で縫製したか)まで、サプライチェーンの各段階を記録・追跡できる仕組みのことです。デジタルIDやQRコードを使って情報を管理する取り組みが世界的に進んでおり、COTANCE主導のEN 18199規格はこれを業界標準として定めようとするものです。消費者にとっては「自分の革製品がどこから来たか知ることができる安心感」であり、事業者にとっては「責任ある調達を証明できる競争力」になります。
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参考記事リンク
- International Leather Maker|Inside Rolls-Royce Motor Cars with ILM May/June 2026 issue(2026年5月14日)
- Sustainable Leather Foundation|EUDR: Important News Update(2026年5月5日)
- 繊研新聞|レザーバッグ「KIYOKAWA」のデザイナー松村美咲さん 物作りを未来ある職業に(2026年5月22日)
- 協同組合資材連|第111回東京レザーフェア開催のお知らせ
- PR TIMES|BONAVENTURA株式会社プレスリリース(2026年5月12日)
- Fern|Commission rules out re-opening EUDR but drops leather from goods covered by it(2026年5月5日)
- Mongabay|EU moves to drop leather from deforestation law after industry lobbying(2026年5月)
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