「第111回東京レザーフェアが浅草で開幕」「中国皮革業界、2026年は回復基調——ACLE上海に向けて弾みをつける」「LHCA、USDA支援で165万ドルを獲得し輸出拡大へ」——2026年5月第3週の革業界は、日本最大の皮革見本市がいよいよ幕を開け、アジア市場の回復気運を示す情報が相次ぎ、国内外ともに力強さを感じた1週間でした。繊研新聞の「めてみみ」コラムでは「30年前に買ったジョンロブ」の話が掲載され、ドレスシューズ回帰の潮流があらためて浮かび上がりました。今週もleather-note.com編集部が、皆様にお届けしたい革業界のニュースをまとめてお届けします。
目次
- ①第111回東京レザーフェア開幕——姫路・山陽レザーが「ピットヌメ」「フッ素フリー防水革」を引っ提げて出展
- ②繊研新聞「めてみみ」コラム——「30年前のジョンロブ」が示す、革靴と時間の価値
- ③モワナ(仏ラグジュアリーバッグ)がミラノに直営店——欧州の革製品ラグジュアリー市場に動き
- ④APLFレポート:中国皮革業界、2026年は回復軌道——ACLE上海(9月)に向け弾みをつける
- ⑤LHCA、USDA「アメリカ・ファースト貿易振興プログラム」で165万ドル獲得——米国レザーの輸出拡大へ
- ⑥EUDR除外提案の公開協議、6月1日の締め切り間近——業界は意見提出を急ぐ
- ⑦ヘンケルによるスタール(Stahl)買収が完了——皮革仕上げ剤の巨人がドイツ化学大手の傘下へ
- 今週の総括・展望
- レザー・皮革業界関係者の皆様へ
- よくある質問(FAQ)
①第111回東京レザーフェア開幕——姫路・山陽レザーが「ピットヌメ」「フッ素フリー防水革」を引っ提げて出展
2026年5月21日(木)〜22日(金)、東京・浅草の都立産業貿易センター台東館にて、日本最大規模の皮革・皮革関連資材展示会「第111回東京レザーフェア(TLF)」が開幕しました。半世紀以上の歴史を持つ本展示会には、国内外のタンナー・商社・加工会社などが一堂に会し、来シーズンの素材トレンドを発信します。今回は革靴のJIS規格改訂プロジェクトも議題として取り上げられ、業界標準化の動きが展示会の中でも議論されました。
姫路の老舗タンナー・株式会社山陽は6階・20番ブースに出展し、ピット槽でなめした「本ヌメ革(ピットヌメ)」のほか、「改良版フッ素フリー防水革」「撥水ヌメ革」「傷防止革」「グローブ革」「環境にやさしい革」などを中心に展示しました。フッ素系化合物の環境問題が欧州で議論されるなか、フッ素フリーで防水性を実現した技術は国内外のバイヤーから注目を集めています。明治44年(1911年)創業の山陽は、原皮の調達からなめし・染色・仕上げ・廃水処理まで自社一貫で手がける国内唯一の工場を持ち、日本皮革産業のリーディングカンパニーとして存在感を発揮しています。

📝 編集部コメント
第111回TLFの開幕は、毎シーズン革業界の「今」を映す鏡となる重要なイベントです。今回、山陽レザーが「フッ素フリー防水革」を前面に出したことは、環境配慮と機能性を両立する革作りというグローバルなトレンドが、日本のタンナーの現場でも確実に実装されていることを示しています。一般来場者にとっても、普段は見られない革の種類や加工技術に触れられる貴重な機会です。革業界のサステナビリティ動向を理解する上でも、TLFは欠かせない情報源と言えます。
②繊研新聞「めてみみ」コラム——「30年前のジョンロブ」が示す、革靴と時間の価値
2026年5月22日付けの繊研新聞「めてみみ」コラムに、30年前にイタリア・フィレンツェの靴専門店で購入したという「ジョンロブ」のローファー「ロペス」の話が掲載されました。1950年登場の同モデルは昨年75周年を迎えており、今も現役で履いていると筆者は記しています。コラムには「ここ数年スニーカーを履いていたが、久しぶりにこの春はドレスシューズを履きたい気持ちになった」という感慨も綴られており、ファッションの中にドレスシューズ回帰の流れが現れていることをにじませています。ジョンロブは英国王室御用達を誇る最高峰の革靴ブランドで、現在はエルメスグループ傘下。新品は25万〜40万円前後するが、中古でも状態の良いものは需要が高く、資産価値が安定していると言われます。
📝 編集部コメント
「30年前に買った革靴を今も履いている」——この一文に、革の本質が凝縮されています。安く使い捨てるのではなく、良質な一足に長く寄り添う。それが革靴文化の核心です。コラムにあるドレスシューズ回帰の気配は、コロナ後のカジュアル化が一巡し、服や靴に「本物の品質」を求める動きが戻ってきていることを示唆しています。leather-note.comが扱う「革製品を長く愛用する文化」とも共鳴するこの流れ、今後も注目し続けたいと思います。
③モワナ(仏ラグジュアリーバッグ)がミラノに直営店——欧州の革製品ラグジュアリー市場に動き
2026年5月22日、繊研新聞が「仏ラグジュアリーバッグ『モワナ』がミラノにイタリア初の直営店をオープンした」と報じました。詳細な情報は有料記事のためアクセスできませんでしたが、モワナはフランスの高級皮革バッグブランドで、近年アジアを中心にグローバルな展開を加速しています。ミラノへの出店は、欧州高級品市場での存在感を高める戦略として読み取れます。ちょうどケリング(グッチ・サンローランなどを擁するラグジュアリー複合企業)が2026年初頭に組織再編を発表するなど、ラグジュアリー革製品企業の戦略的動向が活発化している時期と重なります。欧州市場での高級革製品の競争は激化しており、新興ブランドも含めたプレーヤーの動向が注目されます。
📝 編集部コメント
モワナのミラノ出店が示すのは、ラグジュアリー革製品市場の「旗艦都市」としてのミラノの求心力が今も衰えていないという事実です。パリ、ミラノ、ロンドン——この三都市での存在感は、ラグジュアリーブランドとしての格を象徴します。日本の革ブランドが海外展開を目指す際の参考となる動向としても、注目しておきたいニュースです。
④APLFレポート:中国皮革業界、2026年は回復軌道——ACLE上海(9月)に向け弾みをつける
2026年5月21日、APLFは「中国皮革業界は2026年に回復基調を保ちつつある」と報じました。国内需要の回復・消費者信頼感の上昇・一帯一路(Belt and Road)やASEAN市場への輸出拡大が後押しし、業界全体としてポジティブな勢いが維持されているとの見通しです。この情報は9月1〜3日に上海で開催されるACLE(全中国レザー展示会)第26回に向けた業界インサイトとして発信されました。ACLEには国内外から約1,000の出展者が集まり、80,500平方メートルの展示面積が確保される見込みで、ブース需要は旺盛と伝えられています。2025年は輸出が10.5%減と低調でしたが、その底を打ったとの判断が業界内で広がりつつあります。
📝 編集部コメント
中国市場の回復は、グローバルな革業界にとって極めて大きな意味を持ちます。中国は世界最大の革製品生産国・消費国であり、その需要の動向は原皮価格から完成品市場まで広範な影響を及ぼします。日本の革製品ブランドや材料商社にとっても、中国市場の行方は重要なシグナル。ACLE2026の結果は、下半期の業界見通しを占う重要な指標になるでしょう。leather-note.comでも引き続き中国市場動向を注視します。
⑤LHCA、USDA「アメリカ・ファースト貿易振興プログラム」で165万ドル獲得——米国レザーの輸出拡大へ
2026年5月21日、米国の皮革・原皮業界団体「Leather and Hide Council of America(LHCA)」が、米国農務省(USDA)の新プログラム「アメリカン・ファースト・トレード・プロモーション・プログラム(AFTPP)」から165万ドル(約2億4,000万円)の支援を獲得したと発表しました。この資金は、米国産原皮・スキン・皮革の輸出先を多様化し、グローバル市場シェアを拡大するための販促活動に活用される予定です。米国は世界最大級の原皮産出国の一つであり、輸出が産業の95%以上を占めます。LHCAの会長ケリー・ブロジナ氏は「農業貿易赤字を改善するためのUSDAの取り組みに感謝する」とコメントしています。
📝 編集部コメント
「アメリカ・ファースト」という政策ラインの下で、米国が自国皮革産業の輸出支援に公的資金を投入したことは注目に値します。特に、EUDR除外という欧州側の動きと、米国政府の皮革輸出支援という動きが同時期に進んでいる点は、革業界が地政学的な追い風を受けつつある証左と言えます。ただし、関税政策の行方次第では日本を含む輸入国にも影響が出る可能性があり、グローバルな原皮相場の動向に引き続き注意が必要です。
⑥EUDR除外提案の公開協議、6月1日の締め切り間近——業界は意見提出を急ぐ
5月第3週も、欧州委員会が5月4日に公表したEUDR(EU森林破壊防止規則)から皮革・原皮を除外する委任法案の公開協議が継続していました。締め切りは2026年6月1日です。COTANCEやUNICはじめ業界団体が積極的に意見を提出する一方、環境NGOのFern・Earthsightなどは「皮革の除外は環境保護の観点から問題がある」と批判を続けています。EUDRの本格適用は2026年12月30日(大企業・中規模企業)の予定であり、皮革除外が正式に発効するかどうかは、公開協議の結果と欧州委員会の最終判断を待つことになります。業界に携わる皆様には、この公開協議期間に意見を提出する機会があり、LEATHERという業界の声を届ける最後のチャンスとなっています。
📝 編集部コメント
6月1日の締め切りまで残り僅かとなった今、皮革業界のあらゆるステークホルダー——タンナー、バイヤー、ブランド、小売——が意見を届ける最後の機会です。日本からも、欧州への革製品輸出を行う事業者であれば、英語での意見提出が可能なはずです。「皮革は森林破壊の主因ではない」という科学的事実に基づいた業界の主張が認められつつある今、その声を積み重ねることが、除外の確定につながります。
⑦ヘンケルによるスタール(Stahl)買収が完了——皮革仕上げ剤の巨人がドイツ化学大手の傘下へ
2026年3月、ドイツの消費財・化学品大手「ヘンケル(Henkel)」がオランダの皮革・柔軟材料向け特殊コーティング企業「スタール(Stahl Holdings)」を21億ユーロ(約3,300億円)で買収する取引が完了しました(2月発表・3月完了)。スタールは世界最大級の皮革仕上げ剤(フィニッシング剤)メーカーで、自動車・ファッション・包装など幅広い分野で高機能コーティングを提供しています。なお、スタールはかつてBASFやクラリアントの皮革化学部門を相次いで買収した経緯があり、今般ヘンケルの傘下に入ることで、皮革仕上げ剤のサプライチェーンの集約化が更に進むこととなります。スタールのウェット・エンド(なめし)部門はすでに「Muno」として分離独立しており、ヘンケルに移ったのはフィニッシング・コーティング部門です。
📝 編集部コメント
スタールのヘンケル傘下入りは、革産業のサプライチェーンという観点から見ると非常に重要な動きです。皮革の仕上げに使われる薬剤(染料・樹脂・フィニッシング剤)の大手がドイツの化学コングロマリットに吸収されることで、皮革化学品市場の寡占化が進む可能性があります。タンナーにとっては仕入れ先の選択肢・価格交渉力に影響が出るかもしれません。革製品ブランドや製品メーカーも、このような上流の変化を長期的視点で把握しておくことが重要です。
今週の総括・展望
2026年5月第3週は、「革業界のリアルな現場」と「グローバルな構造変化」が交差した週でした。
第111回東京レザーフェアの開幕は、日本の皮革産業の底力を見せる好機です。姫路・山陽レザーが持参した「フッ素フリー防水革」に象徴されるように、日本のタンナーは機能性と環境配慮を高次元で融合させる技術革新を続けています。一方、繊研新聞「めてみみ」の「30年前のジョンロブ」が語るドレスシューズ回帰の気配は、より広い文脈での革製品の「価値の再評価」につながる可能性を秘めています。
グローバルでは、中国市場の回復傾向・米国の輸出支援強化・EUDR協議の最終局面・ヘンケルによるスタール買収完了と、業界の構造を左右するニュースが相次ぎました。個々のニュースを点として見るのではなく、「革という素材の世界的な再評価」「サプライチェーンの透明性と持続可能性」というキーワードでつなぎ合わせると、業界のおおきな潮流が見えてくるはずです。
5月末から6月にかけては、EUDR協議の締め切り(6月1日)、革のデザインコンテスト応募開始(6月1日〜)、ACLE上海への準備など、国内外で動きが続きます。leather-note.comでは引き続き毎週の情報をまとめてお届けします。
レザー・皮革業界関係者の皆様へ
革製品好きのユーザーへ
「30年前に買ったジョンロブを今も現役で履いている」——このコラムを読んで、革製品の底力を感じた方も多いのではないでしょうか。流行のスニーカーが数年でくたびれる一方で、きちんとケアされた革靴は数十年にわたって使い手に寄り添います。東京レザーフェアで展示されているような日本のタンナーが作る高品質な革素材が、日本の職人の手を経て革製品になるまでのストーリーを知ることも、革を選ぶ喜びの一つです。「長く使える一点」を選ぶ眼を育てるヒントは、こうした業界の動向の中にも転がっています。
革事業者・ブランド担当者へ
今週の最大のアクションアイテムは「EUDR公開協議への意見提出(〜6月1日)」です。皮革除外を確定させるためには、業界の声を欧州委員会に届けることが引き続き重要です。また、ヘンケルによるスタール買収完了を受け、皮革仕上げ剤の調達先・価格動向を改めて確認しておくことも賢明です。中国市場の回復傾向は原皮需要の押し上げにつながる可能性があり、下半期の原材料コストを左右する要因の一つとして注視が必要です。東京レザーフェアで最新の素材と業界トレンドを仕入れた後は、その情報を製品開発に素早く活かすことが、秋冬シーズンに向けた競争力につながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「フッ素フリー防水革」とはどのような革ですか?
従来の防水革は、フッ素系撥水剤(PFAS)を使って水を弾く性能を付与していました。しかし、PFASは環境中で分解されにくい「永遠の化学物質」として欧州などで規制が強化されています。「フッ素フリー防水革」は、これらのフッ素化合物を使わずに撥水・防水機能を実現した革です。姫路・山陽レザーなどが開発・改良を進めており、環境規制の厳しい欧州バイヤーからの需要が高まっています。機能性と環境配慮を両立する次世代の素材として業界から注目されています。
Q2. 東京レザーフェアに一般人として参加する際に注意することはありますか?
東京レザーフェアは業界向けの見本市ですが、事前登録を行えば一般の方も入場できます。注意点としては、①公式サイト(tlf.jp)での事前登録と参加票の印刷が必須であること、②入場受付は今回7階であること、③最終日(22日)は受付が15:30で終了すること、④展示品の購入・注文は基本的にできないこと(素材の展示・商談会のため)などが挙げられます。革好きの方にとっては、普段見られない希少な革素材に直接触れられる特別な体験になるはずです。
Q3. 中国皮革業界の回復は、日本の革製品市場にも影響しますか?
影響する可能性があります。中国は世界最大の皮革製品生産国・輸出国であり、中国の国内需要が回復すると、中国市場向けの原皮需要が増加し、グローバルな原皮・半加工革の価格が上昇する可能性があります。また、中国ブランドの製品が国内外市場で競争力を高めれば、日本のレザーブランドにとっての競合状況も変化します。一方で、中国市場の拡大は日本の素材タンナーにとっての輸出機会でもあります。どちらの側面も持つ複合的な動向として理解することが重要です。
Q4. 米国のLHCAが獲得した輸出支援資金は、日本にも影響しますか?
間接的な影響はありえます。LHCAが165万ドルの支援を受けてアジア市場での販促活動を強化すれば、米国産原皮の日本への輸出拡大や、価格競争の激化も考えられます。日本のタンナーは国産原皮・輸入原皮の両方を使用しており、米国産原皮の供給量・価格の変動はタンナーのコスト構造に影響します。一方、米国の輸出支援は「品質・持続可能性・信頼性」をアピールするものであり、質を重視する日本市場との相性は良い面もあります。
Q5. 「ジョンロブ」の革靴が30年以上使えるのはなぜですか?
ジョンロブのような最高品質の革靴が長持ちする理由は複数あります。①グッドイヤーウェルト製法——アッパー(甲革)・中底・ウェルトを縫い合わせ、ソールを交換できる構造。②カーフスキン(仔牛革)などの高品質素材——目が細かく耐久性が高い。③職人の手仕事による精緻な縫製・仕上げ。④適切なケアの継続——クリームでの保湿、ブラッシング、木製シューキーパーでの形状維持。「良い革靴は一生もの」と言われる所以は、素材・製法・ケアの三位一体にあります。leather-note.comでも革製品のケア方法を詳しく解説しています。
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参考記事リンク
- 株式会社山陽|第111回 東京レザーフェアに出展いたします(2026年4月30日)
- TOKYO LEATHER FAIR|第111回東京レザーフェア公式サイト(2026年5月21〜22日)
- 繊研新聞|《めてみみ》30年前の「ジョンロブ」(2026年5月22日)
- APLF|China leather sector eyes growth in 2026 amid market recovery(2026年5月21日)
- APLF|LHCA Receives $1.65 Million Funding from USDA(2026年5月21日)
- Sustainable Leather Foundation|EUDR: Important News Update(2026年5月5日)
- Henkel|Henkel agrees to acquire specialty coatings company Stahl(2026年2月4日発表・3月完了)
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