6月の革業界は、国内で「革のデザインコンテスト2026」の募集開始という明るいニュースで幕を開けました。海外では、インドの革・靴輸出が年度ベースで約1.7%減と前年をわずかに下回る結果が公表され、米国関税や中東情勢という厳しい外部環境の中での底堅さが浮き彫りになっています。また、EUの森林破壊防止規則(EUDR)から革を除外する提案についてのパブリックコンサルテーションが6月1日に締め切りを迎え、業界ぐるみの関与が問われた1週間でもありました。
目次
- 「革のデザインコンテスト2026」——6月1日より募集開始、12月の東京レザーフェアで表彰へ
- インド革・靴輸出、FY2025-26に47.5億ドル——前年比わずか1.66%減で底堅さ示す
- EUDR革除外のパブリックコンサルテーション締切(6月1日)——業界の積極参加が問われた
- APLF、秋の展示会カレンダーを更新——ACLE上海・ソウル・ジャカルタなど相次ぐ
- 久保柳商店が自社ショールームで個展を開催——皮革問屋発の直接発信スタイルが注目
- 今週の総括・展望
- レザー・皮革業界関係者の皆様へ
- よくある質問(FAQ)
- 参考記事リンク
- 過去分はこちら!
① 「革のデザインコンテスト2026」——6月1日より募集開始、12月の東京レザーフェアで表彰へ
協同組合資材連が主催する第16回「革のデザインコンテスト2026 in 東京レザーフェア」が、2026年6月1日より作品の募集を開始しました。東京都を共催に迎え、経済産業省・台東区・日本皮革産業連合会(JLIA)、さらにはイタリアの展示会Lineapelleが後援・協賛する国内有数の皮革デザインコンテストです。
同コンテストはファッション部門・プロダクト部門に分かれており、プロダクト部門では7月中旬の一次審査を経て、インターネット投票も実施されます。表彰式および作品展示は、2026年12月に開催予定の第112回東京レザーフェア会場にて行われます。
このコンテストは、革製品のデザインに情熱を持つ方々のためのプラットフォームであり、才能あるデザイナーの発掘と革の魅力の発信を目的としています。革業界と若いクリエイターをつなぐ重要な取り組みです。
📝 編集部コメント
革のデザインコンテストは、業界の未来を担う若手デザイナーを育てる重要な場です。受賞作がインターネット投票にもかかるプロダクト部門は、一般の革ファンも関与できる開かれた審査プロセスとなっています。デザインの力で革の魅力を発信する試みは、業界の老若男女を巻き込む好循環を生むでしょう。ファッション・工芸・産業デザインを志す学生や若手に、ぜひ挑戦してほしいコンテストです。
② インド革・靴輸出、FY2025-26に47.5億ドル——前年比わずか1.66%減で底堅さ示す
インド政府の公式貿易統計(DGCI&S)に基づく集計によると、2025〜26年度(FY2025-26)のインドの革・皮革製品・靴輸出総額は47億5,000万ドル(前年度比1.66%減)となりました。前年度のFY2024-25が48億3,000万ドルだったため、ドル建てでは小幅な減少です。一方でルピー建てでは前年比2.62%増と実質的には成長していることも注目されます。
最大セグメントである「革靴(Leather Footwear)」は19億5,000万ドルで前年比3.03%減でした。しかし、靴部品(Footwear Components)と非革靴(Non-Leather Footwear)はそれぞれ3.77%・3.58%の小幅増加を記録しています。
インド革産業がこの結果を出した背景には、2025年8月から約5ヶ月にわたって課された米国の50%の高関税、そして中東情勢悪化による紅海・ペルシア湾ルートの迂回(15〜20日の輸送遅延)という二重の逆風がありました。インドの輸出振興機関であるCLE(Council for Leather Exports)は、米国・EU・英国・EFTA諸国・ニュージーランド・オマーンとの貿易協定交渉が長期的な輸出拡大の機会になると述べています。
📝 編集部コメント
関税ショックと海運混乱というダブルパンチを受けながら、わずか1.66%減に留めたインドの底堅さは注目に値します。世界第2位の皮革生産国であるインドは、プレミアム品質の革靴・革製品で知られ、日本のブランドも調達先として活用しています。今後の米印・日印の貿易協定の動向は、日本の革製品業界にも直接影響する可能性があります。
③ EUDRの革除外コンサルテーション締切(6月1日)——業界の積極参加が問われた
欧州委員会が5月4日に正式提案した「革・原皮・毛皮をEUDR(EU森林破壊防止規則)の適用対象から除外する委任立法案(Delegated Act)」について、一般からの意見募集(パブリックコンサルテーション)が6月1日に締め切りを迎えました。
COTANCEの前事務局長でEU政策アドバイザーのグスタボ・ゴンサレス=キハーノ氏は5月12日のLeatherbizの記事で、「コンサルテーションは既に39件のコメントが集まっており、業界関係者は必ず参加すべきだ」と呼びかけていました。この提案が最終的に発効するためには、EU議会および加盟国の審議・承認が必要であり、環境団体などの反対勢力が議会への働きかけを強めています。
コンサルテーションの結果次第では、欧州委員会の判断を支持するための業界エビデンスとなり得ます。6月1日の締切後、EU議会での本格審議に移行する見通しです。
📝 編集部コメント
EUDRをめぐる議論は「革は森林破壊の主因ではない」という科学的証拠と、「牛肉と革の供給チェーンは不可分」という環境団体の主張が対立しています。日本の皮革業界は直接の当事者ではありませんが、EU向け輸出を行う国産ブランドや欧州素材を仕入れるタンナーにとっては無関係ではありません。業界全体がこの議論の行方を注視し、自社のサプライチェーン透明性を高めておくことが長期的に重要です。
④ APLF、秋の展示会カレンダーを更新——ACLE上海・ソウル・ジャカルタなど相次ぐ
APLFが公式サイトで公開している2026年の国際皮革展示会カレンダーが更新され、秋以降の日程が明らかになりました。主なスケジュールは以下の通りです。
- 2026年9月1日〜3日:全中国革展覧会(ACLE)——上海新国際博覧センター(上海)
- 2026年10月29〜30日:APLF ソウル(Coming Soon)
- 2026年11月17〜18日:APLF ASEAN ジャカルタ(インドネシア)
- 2027年3月31日〜4月2日:APLF 香港
特に注目されるのはインドネシア・ジャカルタでのAPLF ASEANです。インドネシアはASEAN最大の経済国であり、直接雇用100万人近くを誇る革産業を擁しています。2025年にもフットウェア輸出が堅調な成長を記録しており、グローバルな革サプライチェーンにおけるASEAN地域の存在感がさらに高まると期待されています。
📝 編集部コメント
APLFが香港・上海に加えてソウル・ジャカルタへと展示会を拡張していることは、アジアにおける革産業の地政学的な広がりを示しています。韓国はK-ファッションの台頭とともに革製品市場が成熟しつつあり、インドネシアは生産拠点としてだけでなく消費市場としても急成長しています。日本のブランド・タンナーにとっても、これらの展示会は新たな取引先・パートナーを発掘する絶好の場になり得ます。
⑤ 久保柳商店が自社ショールームで個展を開催——皮革問屋発の直接発信スタイルが注目
東京・浅草の老舗皮革卸問屋・久保柳商店が、6月3日(水)〜5日(金)の3日間、自社ショールームにて個展を開催しました。先週の第111回東京レザーフェアで最新のトレンド見本帳を発表したばかりの久保柳商店が、今度はショールームという独自の場を使って、バイヤーや設計者に向けたよりきめ細かな素材提案を行う機会を設けました。
革問屋が展示会出展だけでなく、自社ショールームでの個展という形で直接的な顧客接点を作るスタイルは、業界内でも広まりつつある傾向です。より少人数でじっくりと素材の魅力を伝えられるこの形式は、特にニッチな革種・特殊加工の紹介に効果的とされています。
📝 編集部コメント
大型展示会での出展と、自社ショールームでの個展というハイブリッド戦略は、素材業者が顧客との関係を深めるうえで非常に理にかなった取り組みです。素材の説明には手に取って触れることが欠かせませんが、大型展示会では時間も場所も限られます。個展形式なら、素材の背景・生産者の物語・季節感を含めた丁寧なプレゼンテーションが可能です。こういった取り組みが積み重なることで、「革を買う行為」の意味を深めることができます。
今週の総括・展望
5月29日〜6月4日の革業界は、大きな動きよりも、各地での着実な歩みが目立つ1週間でした。
国内では、「革のデザインコンテスト2026」の募集開始が、業界の次世代育成への意志を示す象徴的なニュースです。東京レザーフェアという日本最大の皮革展示会が単なる「素材の見本市」にとどまらず、「デザインの発信地」としての役割も担っていることが、今回の取り組みに表れています。
海外では、インドの輸出データが興味深い示唆を与えています。関税ショックと海運危機という「外部ショック」に晒されながら、わずか1.66%減というパフォーマンスは、インド革産業のサプライチェーンの強靭さを示しています。一方で、EUDRをめぐるコンサルテーション締切は、規制への対応が業界の意志表示として問われる新たな時代の象徴でもあります。
また、APLFが秋以降のアジア展示会カレンダーを更新したことは、グローバルな革産業の重心がアジアにシフトしていることを改めて確認させてくれます。上海・ソウル・ジャカルタという3都市での展示会は、日本の革業界にとっても「アジア市場を知る」窓口として注目に値します。
レザー・皮革業界関係者の皆様へ
革製品好きのユーザー
「革のデザインコンテスト」は一般の革ファンにも関係があります。プロダクト部門ではインターネット投票が行われるため、実際に消費者が「好きな革製品デザイン」を選べる機会があります。次世代の革職人やデザイナーたちの作品に触れ、応援する——そんな形で、革の文化を育てることに参加できます。また、個展やショールーム見学など、「素材から知る」革の楽しみ方も、だんだんと一般にも開かれてきています。
革事業者・ブランド担当者
インドの輸出データが示すように、外部ショックへの対応力は今後の競争力の核となります。自社の仕入れ先・素材の調達先がどれほど多様化されているか、改めて確認しておく良い機会です。また、EUDRのコンサルテーション締切が示すように、規制対応は「来てから考える」ではなく「来る前から発信し参与する」姿勢が求められます。自社のサステナビリティ情報を整備し、外部に発信できる状態にしておくことが、取引先・消費者・規制当局への信頼づくりにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「革のデザインコンテスト」に参加するには?
協同組合資材連が主催する「革のデザインコンテスト2026 in 東京レザーフェア」は、6月1日より作品の募集を開始しています。ファッション部門とプロダクト部門があり、詳細は公式サイト(kawalove.com)でご確認ください。表彰式は2026年12月の第112回東京レザーフェア会場にて行われる予定です。
Q2. インドの革産業と日本との関係は?
インドは世界第2位の皮革生産国であり、特に革靴・革小物・皮革製品の製造で高い技術力を誇ります。日本のブランドにとっては、欧米・イタリア製と比較して一定品質を確保しながらコストを抑えられる調達先として知られています。また、インドのタンナーが扱うシープスキン・ゴートスキンは、日本市場でも革小物や手袋の素材として活用されています。
Q3. EUDRのパブリックコンサルテーションとはどういうものですか?
パブリックコンサルテーション(公開意見募集)とは、欧州委員会が法律の改正案などを公開し、一般市民・事業者・団体などから意見を募る仕組みです。今回は、革・原皮・毛皮をEUDRの適用対象から除外する委任立法案について意見が求められました。コンサルテーションの結果は委員会の政策判断の参考になり、業界団体が積極的に参加することで「革業界の立場を科学的証拠とともに示す」機会となります。
Q4. APLFのASEAN展示会とはどういうものですか?
APLFはアジア太平洋地域最大の革・ファッション素材展示会を運営する組織で、香港・上海のほか、ASEAN地域にも展開を広げています。2026年11月にはインドネシア・ジャカルタで「APLF ASEAN」が開催される予定です。インドネシアは近年、革・靴製造の重要拠点として世界的に注目されており、国際的なバイヤー・タンナー・製品メーカーが集う場となることが期待されています。
Q5. 皮革問屋の個展は一般の革好きも見学できますか?
久保柳商店のような皮革問屋の個展は、基本的にはプロ(バイヤー・デザイナー・革製品メーカー)向けに開催されることが多いですが、一部は事前問い合わせによって見学できる場合もあります。革好きとして素材に触れたい方は、事前にショールームに問い合わせてみることをおすすめします。業界のプロが案内してくれる革の体験は、市販品の購入だけでは得られない深い知識と感動を与えてくれるでしょう。
参考記事リンク
- NEWSCAST「第16回 革のデザインコンテスト2026 in 東京レザーフェア 6月1日より募集開始」
- APLF「Indian Leather and Footwear Exports Dip 1.66% to $4.75 Billion in FY2025-26」(2026年6月4日)
- APLF「Leather industry urged to respond to EUDR consultation」(2026年5月12日)
- APLF ASEAN 2026(ジャカルタ)公式ページ
- 久保柳商店 公式サイト(個展情報)
- 東京レザーフェア 公式サイト
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